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国際環境NPO団体AEPW、 プラスチック廃棄物を削減しリサイクル率を向上するための27の施策を発表
December 26, 2023
  • 192カ国を廃棄物管理の成熟度別に分類した結果、すべての国にプラスチック廃棄物を減らし、リサイクル率を向上させる機会があることが判明

    • 日本は6段階中上から2つ目の評価を受け、192カ国のうち上位35カ国の結果に

  • 60%を超える国で、廃棄物管理体制が未熟であることが明らかになり、改善策を投じることにより世界のプラスチック廃棄物汚染を大幅に軽減することが可能

  • 拡大生産者責任(EPR)の導入がリサイクル率を向上させる効果的な施策と特定

シンガポール発、2023年12月14日 – 国際環境NPO団体のAlliance to End Plastic Waste (AEPW:廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス、以下AEPW、本部:シンガポール)は、独コンサルティング会社ローランド・ベルガーの協力の下調査を実施し、廃棄物の回収率とプラスチックのリサイクル率を全世界で大幅に向上させるためのフレームワークを発表しました。AEPWが公表した「プラスチック廃棄物管理に関するフレームワーク」では、廃棄物管理システムを向上させるための国家行動計画の策定と、体制の見直しに役立てることができる政策と施策のフレームワークが示されています。

メタ分析を取り入れた本調査では、廃棄物管理およびリサイクルインフラ、法的枠組み、運用モデルなどの特性を基に、192の国々をプラスチック廃棄物管理とリサイクルの成熟度によって6つのカテゴリーに分類しました。各カテゴリーは以下の通りです。

カテゴリー1

未成熟段階のシステム

廃棄物管理のインフラが未導入、または最低限のものしか導入されておらず、プラスチックリサイクル率が5%以下の国

カテゴリー2

初期段階のシステム

廃棄物管理に関する基本的な規制が実施されているが、回収と廃棄処理のインフラ整備が不十分で、プラスチックリサイクル率が10%以下の国

カテゴリー3

発展途上段階のシステム

機能的な廃棄物管理体制は導入されているが、回収、選別、焼却、リサイクルの体制は経済価値から見て妥当とされる範囲でしか整っておらず、新たな政策が実施されなければ、プラスチックリサイクル率が15%を超えない国

カテゴリー4

機能的だが大半が未規制のシステム

規制によりプラスチックリサイクル率が25%に近づきつつある国

カテゴリー5

先進的だが課題のあるシステム

バリューチェーンにおいて特定のセグメントに課題を抱えている可能性があるものの、40%以下のプラスチックリサイクル率を達成できる国

カテゴリー6

成熟して機能しているシステム

プラスチックリサイクル率は40%を超え、他の国々の手本となる世界的なベストプラクティスを実践している国

今回の調査を通じ、全世界の60%を超える国々の廃棄物管理体制が未熟または初期段階にあり、プラスチック廃棄物のリサイクル率は8%未満であることが分かりました。カテゴリー1と2に分類された国々は、環境中に廃棄されるプラスチックごみを撲滅する大きな機会を有しています。これらの国々では通常、非公式に有価物を回収するウェイスト・ピッカーが廃棄物管理上重要な役割を果たしています。国の廃棄物管理体制の段階的変革を計画する際には、ウェイスト・ピッカーを認め、支援し、体制に確実に組み込む必要があります(「公正な転換」1)。また、カテゴリー1と2の国々においては、廃棄物管理に関する法律を整備し、組織的能力を構築し、ブランドオーナーや廃棄物を排出する企業に対し金銭的義務を課すことなどが効果的であることも判明しました。

リサイクル率の全体的な向上を図るためには、拡大生産者責任(EPR)の導入が非常に効果的な政策であることも明らかとなりました。特にカテゴリー3、4、5の国に有効で、EPRを導入することにより、ブランドや小売業者、使用後の処理を含めたプラスチック・バリューチェーン全体でリサイクルや廃棄の責任を共有することができます。EPRで徴収された資金は、一般的には廃棄物管理体制の向上とリサイクル技術に投じられ、地域間での協調に効果を最大化することができます。国の廃棄物管理体制の成熟度が上がるにつれ、最終的には環境調整された法的効力のあるEPR制度が、自主的な取り組みに代わって実施されます。

カテゴリー5と6は、プラスチックの完全な資源循環化に向かって最先端を進んでいる数少ない国々です。これらの国々には、プラスチック廃棄物を非常に細かく選別できる技術など、循環経済を効率よく実現するためのイノベーションを推進するための能力とリソースが揃っています。このカテゴリーの国がさらにプラスチックリサイクル率を上げるためには、あらゆる種類の廃棄物の循環に関する包括的な政策ロードマップの策定が有効です。EPRにおいては、循環型設計原則の採用を促進するために、リユースやリサイクル目標の達成や環境にやさしい素材の使用を促すためのエコ調整料金などの導入が効果的です。

調査対象となった192カ国のうち、日本はカテゴリー5に分類され、先進的である一方で課題のあるシステムを有しているという評価を受けました。本調査では、カテゴリー5またはカテゴリー6に分類された国はわずか35カ国でした。カテゴリー5の国は、バリューチェーンの特定の分野ではまだ課題が存在するものの、最大40%のプラスチックリサイクル率を達成できています。

AEPWの日本・韓国統括である穴田武秀は次のように述べています。「今回日本は、プラスチック廃棄物管理に関するフレームワーク分析でカテゴリー5の結果となりました。日本がより循環型社会の構築を進めるためには、既存のEPRの発展を推進することが必要です。特に、プラスチック循環の促進を支援するためには、革新的な技術へのさらなる投資が効果的です。また、世界のベスト・プラクティスを参照しつつ、リディ―ス、リユース、リサイクルを確実に進め、自国におけるプラスチックリサイクル率を向上させる一方で、知識、人材、技術を他国の廃棄物管理システムの改善のために提供することが期待されています」

AEPWのCEOであるジェイコブ・デュアーは次のように述べています。「世界経済の成長に伴い、プラスチック消費量は過去10年にわたり増加の一途をたどってきました。しかし、いまだにプラスチック廃棄物全体の70%が回収されずに環境中に排出され、埋め立てまたは焼却により処分されています。循環経済というビジョンを指針として優先順位をつけ、自国の廃棄物管理体制の現在の成熟状況に合った実用的な解決策を見いだすことで、この状況を改善できる機会をどの国も有しています。『プラスチック汚染に対し、法的拘束力のある国際的手段を策定する』という国連環境総会の決議は、これらの優先順位を決定する上で大きく役立つ可能性があります。AEPWの廃棄物管理成熟度フレームワークで明らかとなったように、万能な解決策は存在しませんが、どのレベルでも使用でき、かつ持続可能なプラスチックに係る資源循環の実現を急激に前進させることのできる政策は存在します」

ローランド・ベルガーのプリンシパルであるドラゴス・ポパ氏は次のように述べています。「リサイクル技術の進歩にもかかわらず、毎年2億5,000万トンのプラスチック廃棄物が誤った方法で処理されています。ローランド・ベルガーは、プラスチック廃棄物管理フレームワークの開発において、独自のフレームワーク、データベース、領域固有の知識や専門性を共有し、AEPWのグローバルネットワークやプロジェクトパートナーから得られた重要な知見を統合しました」

今回の調査では、国または地方自治体を取り巻く事情が国によって大きく異なり、その廃棄物管理体制と技術的な能力の発達水準も異なるという現実が分かりました。したがって、提案されている政策とインフラ整備の優先順位は、体制の見直しに必要なリソースが入手可能か否かという点のほか、国や自治体における現状も反映する必要があります。

「プラスチック廃棄物管理フレームワーク」の全文(英語)は、こちらからダウンロードできます。